日本人の英語スピーキング力実態調査:学生と役員がトップ、社員の課題とは?

先日、レアジョブというオンライン英会話を提供する会社から、日本人の英語力を国際比較した調査が発表されました。その結果は、大変興味深いものでした。以下は、その調査の要約です。

レアジョブの調査

調査概要

  • 調査対象: 66万人のデータから、日本人ビジネスパーソンを含む42万人が対象。
  • 国際指標: 調査は国際的な言語力指標「CEFR」に基づいています。

調査結果

  1. 全体のスピーキング力
  • 日本人の英語レベル: 最も多いレベルは初級の「A2High」。
  • ビジネスで必要なレベル: グローバルビジネスで通用する「B2」以上の人は7%に過ぎない。
  • 海外受験者との比較: 海外受験者の最多レベルは「B1High」、そのうち「B2」以上が4分の1以上。
  1. 職種・役職別のスピーキング力
  • 学生のスピーキング力: どの職種よりも学生のスピーキング力が高く、B1以上の割合が最も多い。
  • 役職別の比較: 取締役が最もスピーキング力が高く、「B2」以上の割合が多い。一般社員は「B1」以上が47.9%と最も少ない。
  1. 業種別のスピーキング力
  • コンサルティング業界: 「B1」以上の割合が60%以上と、他の業種に比べて英語力が高い。
  • グローバル関連部署: グローバル関連の業務を行う部署でも「B2」以上は1割程度に留まる。
  1. スキル間のギャップ
  • リスニング・リーディング vs スピーキング: リスニング力とリーディング力が高くても、必ずしもスピーキング力が高いとは限らない。

結 論

この調査結果から、日本のビジネスパーソンの英語スピーキング力が全体的に低いことが明らかになりました。特に実務を担う社員や管理職のスピーキング力が低く、グローバルビジネスでの実効性を担保するためには英語力向上が必要です。また、リスニングやリーディング力に比べてスピーキング力が低いことが課題として浮き彫りになりました。この結果は、企業の人材育成戦略や教育プログラムの見直しに役立つでしょう。

ここで再度日本人の英語の低さをあげつらってもしょうがありません。これ肌感覚ですが、主要国のビジネスマンはだいたい英語が通じます。日本が異様に通じないことは確かです。

アナリシス

学生と取締役のスピーキング力が高いのは納得がいく

これは面白いですし、納得のいくものでもあります。学生は時間がありますし、英語の授業もあるでしょう。であれば話す機会も多く、会話力が社会人よりも高くなるというのは納得できます。

また取締役も、一般論で考えれば会社の中で優れた人がなるもの。学習が得意であっても不思議ではありません。そういう意味で順当な結果と言えなくもないと思います(結果論ですが)。

コンサルティング業界の英語力が高いのも納得

コンサルティング業界の英語力が高いのも納得できます。コンサルティング業界は優秀な人しか取りませんし、業務的に自社完結ではなく、他社との交わりがある業種でしょうから、自然とコミュニケーションを図る機会も増えるのでスピーキング力が上達してもおかしくありません。

スピーキング力がリスニング、リーディングより低い

これは私がいつも言ってることですが、スピーキング力が低いのは当然です。スピーキング力を上げるには、頭の中で自分の言いたいことを英語で表現(適切な英単語を、英文法に則り並べてそれを口に出す)する練習も必要です。リスニングやリーディングは、音声や本を使って自分で練習できます。しかし、日本では英語を日常的に話す機会がありませんので、週に数回の1時間の英会話レッスンが話す機会となっています。これだけでは練習時間も頻度も足りませんので、上達しづらいのは当然です。

また、スピーキングにはフィードバックが必要です。自分が口にした表現が適切であるかどうか、自分だけでは評価できません。そのため、どなたかにより良い表現にしてもらう必要があるのです。ただ単に文法的に正しいだけでなく、より適切な表現にしてもらう必要があります。

ではどうすれば英語力は上がるのか

英語がうまく話せない原因は大抵の場合、以下の2点が足りていないからです。

  1. 英語の知識
  2. スピーキング練習

上記にも書いたように、スピーキング力の向上には練習量=場数が重要です。努力というよりも機会を見つけることで、簡単な面もありますが、日本国内では実際にはなかなか難しいです。

しかし、その前の段階として実は英語の知識が足りないというケースがよくあります。知らない単語は聞き取れませんし、話すことなんか絶対にできません。また、より適切な表現を知っておくことも必要です。これらの知識を頭に入れ込んでおくことが足りていないケースが実に多く見られます。そして残念なことに、この前提となる知識が足りないままスピーキングの練習をする方がなんと多いことか。

しょぼい知識で一生懸命にスピーキングの練習をしても、しょぼい英語しか話せるようになりません。よってスピーキング力も上がりません。

最良の方法は、英語の知識を耳で聴いて音読して身に着けることです。これをやりましょう。

なお、この記事はさらっと読めるものですので、英語教育に興味がある方はぜひ見てみることをお勧めします。

ここをクリック:6 万人(*1)のデータから日本人の英語スピーキング力の実態を調査 グローバルビジネスで通用するレベルの英語力を持つ人材は 7%

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なお、番外編としてこのような調査を見たときに注意すべき点を念のため書いておきます

この調査の結果を解釈する際に留意すべき統計上の注意点を以下に列挙し、説明します。

1. サンプルの代表性

留意点: 調査対象は「PROGOS®」受験者66万人のデータに基づいていますが、この受験者が全日本人のビジネスパーソンや学生を代表しているかどうかは不明です。
説明: サンプルが偏っている場合、結果が全体の日本人ビジネスパーソンや学生の英語力を正確に反映していない可能性があります。例えば、英語力に関心のある人や特定の業種・職種に偏っているかもしれません。

2. 自己選択バイアス

留意点: 「PROGOS®」の受験は自己選択によるものであり、特定の動機や意識を持った人々が多く含まれている可能性があります。
説明: 自発的に受験した人は、そもそも英語力向上に意欲的であるため、一般的なビジネスパーソンや学生の平均的な英語力よりも高い可能性があります。このバイアスを考慮する必要があります。

3. データの時点

留意点: 調査データは2020年6月から2024年5月末までの受験データに基づいています。
説明: この期間内に受験者の英語力に変動があった場合、現在の実態とは異なる可能性があります。英語教育の改革や企業のグローバル戦略の変化が影響しているかもしれません。

4. 国際比較の方法

留意点: 海外受験者との比較が行われていますが、海外受験者の具体的な国や背景についての詳細な情報が不足しています。
説明: 国や地域によって英語教育の質や普及度は大きく異なるため、単純な比較では正確な結論を導けない可能性があります。また、比較対象が特定の国に偏っている場合、その結果は全世界を代表していないかもしれません。

5. CEFRレベルの適用

留意点: CEFRレベルに基づく評価が行われていますが、各国や地域でのCEFRの適用方法や認識に差異がある可能性があります。
説明: CEFRレベルの解釈や基準は一貫している必要がありますが、国や地域によっては微妙な違いがあるかもしれません。これが国際比較に影響を与える可能性があります。

6. スキル間の比較方法

留意点: リスニング・リーディング力とスピーキング力の比較が行われていますが、これらのスキルを測定するテストの形式や評価基準が異なる可能性があります。
説明: TOEIC®L&Rと「PROGOS®」の評価方法や採点基準が異なる場合、それぞれのスキル間のギャップを正確に測定することが難しくなります。スキルの測定方法の一貫性と比較の妥当性を考慮する必要があります。

これらの注意点を考慮することで、調査結果の解釈やその後の施策立案においてより精緻なアプローチが可能となります。