英語力トップ自治体の取組と虚実←産経新聞より

産経新聞のウェブサイトに、

中学生英語力、さいたま市と福井県が突出のワケ

と言う、文部科学省が公立の学校を対象とした「英語教育実施状況調査」において、突出して高い成績を記録した、さいたま市と福井県の取り組みを紹介した記事が掲載されていました。

この調査については、過去にも富山県について得出しでブログにさせていただきましたので、そちらもご参照ください。

英語能力は低下?←文科省「英語教育実施状況」より

福井県、さいたま市はどの程度凄いのか

上記の英語教育実施状況調査のデータによると、福井県の中学生の、CEFR A1レベル相当(英検3級程度)の能力を有する生徒の割合は85.8%。さいたま市は86.3%で、上位ツートップ。

平均が47%で、第3位に付けた福岡市が66.0%であることを考えると、いかに突出して秀でているかが分かります。

両自治体の英語力アップの取り組み

このようなダントツの英語力を持たせることに成功した両自治体は、どのようなことを行っているのか。気になるよねー

さいたま市の場合

さいたま市の場合は、

9年間一貫した英語カリキュラム「グローバル・スタディ」を実施している。平成28年に導入したこのカリキュラムでは、小1~6の全学年はクラス担任と外国語指導助手(ALT)らの複数担任制を敷き、可能な限り英語の専科教員も配置。早くから〝生きた英語〟に接する機会を設けている。

産経新聞より

授業では児童生徒にできる限り英語によるインプットをするように工夫しているという。その上で、「今後も子供が英語を使うことを嫌がらないような授業を進めていきたい」としている。

産経新聞より

福井県のケース

福井県では、

文科省が英語教師の実力を測る指標として調査項目に設けた「英検準1級」(大学中級程度)以上などの取得割合は、福井県の場合、中学で64・8%(全国平均40・8%)。福井県では、英語教師の英検などの取得率や中高での授業での英語使用率の目標を設定して改善を進めてきたほか、英語教師を対象にした研修も熱心に行い、授業の充実を図ってきた。

産経新聞より

これで英語力はここまで上がるの?

しかし、本当にこれらが要因でCEFRのA1レベルの子がクラスで9割近くの子が取れるようになるのでしょうか?

この記事で紹介されていた両自治体の取り組みは、他自治体でやってはいない独自の方法ととも書いておらず、これらが成功の要因なのかは分りません。

特に福井県の教師の英語力アップについては、この記事でも紹介されていますが、講師の英語力が上がったからといって、英語を教える力が上がり、それがひいては生徒の英語力アップにつながったのかは、極めて疑問です。

そもそも信頼できる統計か?

この結果が信頼できるものなのかどうかも疑問です。

中学と高校の英語力の相関が、、、

例えば、高校生の英語力と中学生の英語力を見てみます。

福井県では、CEFRのA2レベルの英語力を有する生徒の割合は、59.6%で引き続きトップ。全国平均は46.1%。そして富山県は59.3%(全国2位!すごい)であり、大差はありません。

中学の時にはものすごい高い英語力を持っていた生徒が、高校に行くと考えると、高校レベルでも高い英語力を持っていそうですが、そうでは無いのです。

もちろん中学時代の高い英語力が、そのまま高校時代の高い英語レベルにストレートに反映される、とは言い切れませんが、十分に疑念を抱かせる数値です。

研究者も疑問を

これは私だけではなく、大学の研究者も疑問を持って、検証されております。

「英語力日本一は○○県!」と安易に報じる前に考えてほしい――文科省「英語教育実施状況調査」の問題点

客観的に見て欲しい

この投稿は、ただ単にさいたま市や、福井県の取り組みの揚げ足を取ったり、Disることではありません。

こういうような記事を見て、飛びつくことを戒めたいのです。

英語の勉強法やダイエット法、健康法などでも同様なですが、わかりやすい記事をそのまま信じて、その方法を採用すると言うのは極めて危険なことです。

ある人は

  • 肉だけを食べていたら痩せた
  • 水を1日10リッター飲んだら健康になった
  • Netflixを見ていたら英語がわかるようになった

などの記事は頻繁に目にしますが、科学的根拠が乏しかったり、別の危険があったり、これらの方法が、万人に良いのか、本当に結果につながったのか、最も良い方法なのかどうかも分かりません。

単なる一例に過ぎない場合が多々あります。

しっかりと自分で吟味したり、その道に秀でた人にセカンドオピニオンを求めることも重要です。

良い取り組みはやっている

散々疑問を投げかけてきましたが、もちろん評価すべきだろうと言うこともやっています。

例えば、経験等の外部試験の受験者の割合は、福井県では94.3%、さいたま市では95.9%で、全国のトップです。全国の平均は45.5%。

こうして見てみると、福井県やさいたま市では、生徒の英語力を上げようとする姿勢や努力は感じられます。

しかし、この数値は札幌市92.1%、秋田県も93.4%と高いが、CERRのA1取得にはつながっておらず、「外部試験を受けさせることが学習効果につながっている」とは言えません。

教育レベルを上げると言うものはかくも難しいものなんですね。

ちなみに我が富山県は27.9%。全国平均の半分です。要改善です。