富山県の英語力を考える←文科省調査

先日、毎年ウォッチしている文部科学省から発表される英語教育実施状況調査について分析したものを掲載しましたが、今回は富山県の状況についてを書きたいと思います。あれこれいろいろやっている間に、少し時間が経ってしまいました。

英語教育調査←文科省 どの自治体、取り組みが良いのか?

富山県の英語力の概観

中学は成績↑順位↓

中学校は今年は46.1%で第39位。去年は43.8%で38位でしたのでので、成績は2.3%上昇、順位は1位落としました。

高校は成績↑順位→

高校においても、60.5%、第2位で、去年と比べても特に変動ありません。この高校の順位は全国2位で素晴らしいものだと思います。

今年から新たな調査項目に変わったB1に関しても、第3位と、非常に良好な成績(?)だと思います。

中学校の先生は意識改革を

ここからは富山県の改善ポイントを述べていきたいと思います。

中学生で英検受験率はさらに低下

中学生が英検などの英語の外部試験を受けた比率は、2022年より0.8%低下しました。この低下傾向は、20219年から続いております。

2021年はコロナの影響だと思われますが、去年の状況を考えで見ると、一昨年と比して、修学旅行も実施されるなど、かなりコロナも落ち着いていて、英検受験がそこまで憚られる環境でもなかったと思います。にもかかわらず、さらに低下しています。

またこの低下率も、全国平均では-2.4%ですが、富山県はほぼ2倍の-4.4%です。そして2022年から23年にかけては、全国は+2.38%ですが、富山県は-0.8%。全国と比して、低下の程度が大きいです。

これは指導不足と言わざるを得ません。

また、各家庭の保護者もコロナ偏重ではなかったか、などの点検が必要ではないかと思います。

というのも、英検等の外部試験受験の有無と、成績の良さと大きな相関関係があるからです。英検を受けている県は、総じて成績が良いですので、英検の受験は大いに勧められるところなのに、受験者は伸びていないと言うのは問題だと思います。

英語重視のこの時代に、、、

成績との関係をさておいても、英語重視のこの時代に、英検を勧めないのは困ったものです。なぜなら、英検なども重視されてるから、というのも一つです。英検をある一定の級以上を取得していると入学試験で優遇されたり、授業料などが免除になったりするため、メリットは非常に大きいです。

iken/abroad/また、英検があれば留学を受け入れていくれる国、学校もあります。特にオーストラリアは英検を活用した留学に熱心なようです。https://www.eiken.or.jp/eiken/abroad/

学力に比して低過ぎる

また、中学の学力調査との相関を調べてみると、富山県は英語力の低さが目立ちます

学力調査では全国6位ですが、英語は先ほどの通り39位*。学力と英語力は、0.46と高い相関があるので、このコントラストの奇異さがお分かりいただけると思います。

これは富山県は教育熱心と言われますが、但し書きで「英語以外」と書かねばいけない事態です。(*学力調査は都道府県だけですが、英語の調査は都道府県+政令市も含まれており、母数が異なります)。

高校は大健闘

富山県下の高校となると、中学と大きく異なります。

先ほども述べましたが、高校の成績は第2位。ちなみに去年も第2位。継続して高い順位(成績)を取ると言う素晴らしい事と思います。今年から始まった、B1レベルの取得状況見ても、全国3位で本当にすばらしいと思います。

中学校の英語レベルを考えると、高校では全国第2位まで持っていくっていうのは素晴らしいことだと思います。

富山県の高校の先生、グッジョブ

富山県が考えるべき施策

さて、富山県が英語の成績を上げるためには、何をしたら良いのでしょうか?様々な意見はあると思いますが、今回の調査にのみ基づいて結論を下すと、それは「英検を受けさせる工夫をする」です。

文部科学省のペーパーにも、英語力の高さと、相関が見られた施策に言及しております。

しかしそれは、大体が0.2とほとんど誤差と言って良いのではないかと言うものでした。(相関関係は− 1から1までの数字で表され、1 に近いほど相関関係が高く、− 1は逆の相関がある、と言うことです。例えば、勉強時間を1増やして、成績が1上がれば相関関係は1。逆に成績は1下がれば− 1、上がったり下がったりであれば0です。)

そんな中、英語の外部試験受験率と成績の高さは0.5と他の施策の倍近い相関関係が見られました。

ですので、政策の重点は「外部試験を受けさせる」ことだと思います。

ここで注意したいのは、「外部試験を受けるから英語の成績が良い」、と言う因果関係があるわけではありません。偶然の可能性もありますし、逆に「成績が良い生徒は(やる気もあるから)外部試験も受けている」のかもしれません。

しかしこの調査からは相関関係しかわからないのですから、それが高いことに注力すべきです。

成績の良い県のまねでなく科学的に方法を

ちなみに福井モデルと呼ばれる英語教育は、ALTの人数を増やす(相関関係0.23)、英語の先生の質を上げる(0.35)、などがありますが、これらの政策も相関関係はあるものの、高くなく、外部試験ほどの相関はありません。

よって、外部試験を受けさせる、というのが1にも2にも大事なことになります。

下記の日経新聞の記事では、福井県の英語力の高さを福井県の取り組みを関連付けていますが、今まで書いてきたように因果関係はおろか、相関関係もあまりないものばかりです。こういう記事につられてはいけません。

上記ブログでも書きましたが、自治体はとかくある分野で優れた成果を残した他の自治体の政策をマネする傾向がありますが、担当者が「福井モデル」を盲信してしまうのは、税金の無駄遣いにつながるので、もっと心配です。

日本経済新聞 令和5年3月2日の記事より

富山県の各市町村の施策は分かりませんが、他府県においては受験代金の補助など行っているようです。(しかし無料にするのは反対です。少しでも払わせるべき)。

これらは金銭解決で、教員の力量と関係がなく教育委員会には不評なのかもしれません(少しうがった見方をすれば、利権が生まれにくい)。

投資効率を考えれば高校へ?

また、効率を考えるならば、高校へ重点投資した方が良いかもしれません。

というのも、中学時代に英語の成績は、各県ごとに大きなばらつきがありますが、高校になると、その幅が大きく狭まります。原因はよく分かりませんが、一つの仮説として、英語の蓄積がなされるとともに、成長の過程にあるこの年代は、脳も成長して理解力、記憶力あがったのではないでしょうか。そう考えるとこの時代に英語を多く学ばせると、より成績が伸びるかもしれません。

何より重要な事は、データと分析に基づいて政策を立てて、それを検証し、そしてそれを生かす、いわゆる科学的にPDCAを回すことです。

成績が高い県の真似をしてみるのではなく、科学的で実証的な政策を取り入れるよう、教育委員会や、学校に一人一人が求めていきましょう。そうすることで、子供たちの英語力は伸びていくでしょうし、税金が有効に使われたことになります。