日本経済新聞2月16日の「データで読む地域再生」と言う記事に、東京都と北信越の高校の英語力に関する記事が同時に出ていました。
英語力が国全体で伸び悩む中、各都道府県試行錯誤しています。
しかし、問題の捉え方、それへの対策がきちんとしていないと、解決はしません。実際の都道府県の政策については分かりませんが、この記事を読む限り、日本の英語力の飛躍的向上は遠いと言わざるを得ません。
英語力とは何か?
一つの記事には
実践授業で英語力を磨く
北信越の高校、実践授業で英語力磨く 海外交流も活発に
とあります。その英語力の捉え方として、英検準2級を基準として使っています。
低すぎる基準
英検準2級は、英検のサイトによると、
基本的な応用力として次の段階へつながる重要な級で、レベルは高校中級程度とされています。日常生活に必要な英語を理解し、使用できることが求められます。
日本英語検定協会 準2級の過去問・試験内容
となっています。
この準2級は、中学生でも受かる内容です。このレベルを英語力のレベルとして設定するのは、そもそも低すぎると思います。
大学レベルの英検2級でも会話は苦労
大学受験の英語レベルを見てみると、英検2級に合格していても苦労するレベルです。
英検2級レベルの英語力以上の大学生でさえ、全くと言っていいほど英語を話すことができません。準2級レベルで「実践英語」と言われても、全く心に響きません。
もちろん、英語力向上のため、目標を定める事は必要ですが、レベルが低すぎるし、既存の英語力測定しても、英語力が向上するとは思えません。
目標とやるべき事を明確化すべき
そもそも英語力とは何でしょうか?おそらく、様々な基準はありますが、様々な英語力ランキングなどがあるのでしょうが、1番は会話力を目指していると思います。
それの道筋は明確か?
それに向けてやるべきことは明確でしょうか?正直、これに対する高校の施策を見ていると何が足りていないのかわかっていないのだと思います。
日本人は、英語が話せないと言うことで、会話に重きを置いています。
英会話するのに「英会話」の練習だけでは不十分
しかし、会話を練習したからといって、話せるようになるわけで全くありません。
そもそも英会話に必要な事は何でしょうか?
それは、相手の言葉を聞き取り、それに対して的確な答えをすることです。そうなると、そこに必要なのは、
- 相手の言っていることを聞き取る「聞く力」
- その聞こえた言葉の意味を知っていると言う「ボキャブラリー(語彙力)」
- 答えを組み立てる「話す力」
が必要となります。この記事にある、オンライン英会話を行う取り組みなどは、上記③の「話す力」にのみ注力をしているように見えます。
もちろん、この話す能力も必要ですが、そもそもボキャブラリーがなければ聞き取れませんし、的確な話すことを思い浮かべることができません。
話すより英語を「聞く」「語彙力」が優先
また、相手の言ってることが聞き取れなければ、なりません。相手が何を言ってるのか分かりさえすれば、時間はかかるかもしれませんが、相手に意図を伝えることができます。
そういった意味で、ボキャブラリーと聞く力が、話す力よりも前に必要となることです。まずこちらを重視すべきなのです。
英語レベルによりやるべきことは異なる
職業科にオンライン英会話をする意味
加えて、石川県の取り組みでは、職業科の生徒に、オンライン英会話を行っているそうです。
これは現実を見ているのでしょうか?
申し訳ありませんが、職業化の生徒は普通科の高校生よりも、もっと頑張らなくてはならないレベルです。中学校の基本的な英単語や、文法を再度復習しなければなりません。その状態で一般的な英会話だけをやっても効果はかなり限られます。
もちろん、英語教育を職業他の生徒にやる必要は無い、と言っているのではありません。レベルにあったことをしていない、と言っているのです。そもそも英語レベルが高い、普通科の生徒でも会話能力はかなり限られるのですから。
普通科でも会話はできない
富山県の高校で、台湾など海外の高校生とオンラインで交流する授業がありますが、英語の授業が多く、職業科の生徒より英語の成績が良かった普通科の生徒でも、非常に低いレベルです。
- 質問にはyesノーしか答えられない
- なぜならの説明部分ができない
- 単語でしか受け答えできない
などなど。
やるべきことが間違っているのは明らかではないでしょうか。
英語の内容をもっと魅力的に
また、授業の内容も非常に偏っています。SDGs、難民問題、環境問題などなど、道徳が入り込んで、生徒たちに興味を持たせる内容とは言い難いと思います。
金持ちになる方法、恋愛、マンガ、K-pop等々、学生がもっと興味を持つないようにすべきではないでしょうか。
このトピックの選び方は、教育委員会が意識高いことを見せるため、自己満足のために設定していると思わざるをえません。
建設的な批判と学ぶべき対象
マスメディアは検証を
マスメディアは、各都道府県の取り組みをたれ流すだけではなく、しっかりと実効性の観点、費用対効果など検証して、批判すべきは批判すべきなのではないでしょうか。
現場では、過去の「英語ができない日本人」が再生産されているだけです。
人の事は「忖度」などと批判しておきながら、自分たちを棚に上げておく事はできないと思います。
健全な批判は、緊張感を与え、質がより良くなっていくと思います。
学ぶべき対象は富山県など
最後になりますが、高校の英語力向上について学ぶのであれば、愛媛や富山県の取り組みが参考になります。
というのも、文科省の英語教育調査で県ごとの中学のレベルと高校のレベルが見れますが、中学から高校の伸び率は、東京、愛媛、富山が高い。東京は大都市で、予算も人材も豊富ですので、ほかの2つの地方県を参考にしてはどうでしょうか?
追記(R6年5月30日)
令和五年度の調査が天先日発表されました。上記では愛媛県や富山県を参考にすべき点と書いていましたが、真に参考にすべきは東京都なのではないかと思うに至りました。
東京と言う大都市で人口(高校生の数)多いにもかかわらず、中学生のA1取得率は第3位、高校生のA2取得率第1点、B1取得も第1位となっています。
これだけ見てもすごいですが、さらに都会ならではの事情も加味するとさらにその凄さが分かると思います。
それはベストオブベストの一部は私立高校に流れるにも関わらず、ということです。地方と違い、公立高校がエリート校ということはなく、私立学校にも成績トップの生徒たちは行きます。有名どころでは開成高校など。
ですので、上澄み液をすくった後でさえこの成績ですから、私立も含めた全高校で比較したら、もっとすごいことになるのではないか、と思います。(文科省の調査は公立学校のみを対象としています)。
東京都に感服いたしました。