講談社のゲンダイマネーというサイトに、中学3年生の86.6%が「英検3級」相当…さいたま市の子どもはなぜ「全国トップレベルの英語力」を有するのか?」
という英語に関する記事が載っていました。
英検3級相当の英語力を持つ中学3年生の割合が86.6%という驚異的な数字をだす、さいたま市
中学3年生の86.6%が「英検3級」相当…さいたま市の子どもはなぜ「全国トップレベルの英語力」を有するのか?
の取り組みを紹介されています。そこでは、その結果を出した理由として二つを挙げられています。
- ALT(外国人英語講師)と補助教員の数を増やした
- 英語の授業時間を増やした
現実と少し異なる?
全体的に、この記事は、基本スタンスが少し前に流行った「日本すごい」に通じる「さいたま市の英語教育すごい」、という立場が最初にあり、さいたま市の言っていることを鵜吞みにしており私は批判的です。
さいたま市は人材投資していない
さいたま市が英語教育に対して、多くの“人”と“時間”を投資した
同上
とありますが、まずさいたま市の場合、特に人材に投資してるといるとは言い難いと思います。
ALTに言及されていますが、人口10万人あたりのALTの数はさいたま市は11.19人。政令指定都市と同じ行政レベルである、都道府県で比べると、全国平均は、最高は18.3人。最も多い福井県のALT数は33.95人。さいたま市の約3倍です。さいたま市が、人材に投資しているどころか、言えない部類に入ると思います。補助教員の数がわかりませんので、そちらが群を抜いているのかもしれません。
教育行政に携わっている方の間では、さいたま市の英語能力が高いと言う事は有名で、「福井モデル」と呼ばれる福井県と同じ位、英語教育に関して評価されている自治体です。
その取り組みについて様々なことが取り沙汰されますが、他の自治体が真似して良いこと、鵜呑みにしてはいけないことなど様々あると思います。
特にマスメディアなどで、取り上げられた取り組みは、ベストプラクティスとして「〇〇が取り入れているから」として、すんなりと説得力を持ち、すんなりと受け入れてられてしまうようで、その後に器具を感じております。
この方は、見聞きした情報を、そのまま効果的である、と考えられておられるのではないでしょうか。
ALTの数はほとんど英語力に影響しない
また、人材投資が、その生徒たちの英語能力の向上に気をしていると言う証拠はほとんどありません。
以前のブログでも書いたように、さいたま市や、福井県だけを取り上げると、効果があるように見えますが、他の自治体を見てみると、ALTの人口当たりの数と、英語の成績のよさは、実は少ししか相関が見られません(さいたま市は実際は多くありませんが)。
詳細は下記の記事を参照ください。
学習時間増加はよい取り組み
学習時間を増やすと言うのは大賛成です。効率も重要でしょうが、学習時間に勝るものはありません。
さいたま市が、小学校の英語のレッスン数を、ほかの自治体のほぼ倍もとっているというのは驚異的です。
財政難や、先生の働き方改革(労働時間短縮)、情報(IT)関係も教える内容として追加されているので、教育時間は減少、教える事項は増加と言うことになっています。
どのようにマネージしているのか大変興味深いです。
慣れるのは良いが、もっと詰め込むべき。
現在の英語教育は、コミニケーションが取れるようになることを目的としており、実際の授業でも「アクティブラーニング」なものが多くなっています。
しかし、カリキュラムと適合せず、中途半端で、十分な成果を得られません。
英語でコミニケーションを図れるようになるのであれば、「知識+練習+実践」が必要となりますが、この「実践」がこの日本では十分にできません。
週に数回の英語の授業の場で、知識と練習と実践のすべてをこなそうとし、場数が必要なこの「実践」が授業以外でないため、ほぼ無意味になってしまっているのです(ほかの二つことは家庭で行うことは可能です)。
ですので、割り切ってしまい、知識と練習に資源を集中すべきです。特に英語を日常では必要とせず、頭も柔らかく、また勉強に専念できる学生のうちに、土台をしっかりと作り、将来的に、実践ができる場になったときに、この土台が花開くようにすべきだと思います。
- 英語の本をガツガツ、暗唱できるくらい、音読させる
- ALTには上記の音読の発音矯正をさせる。
- 単語テストを高頻度で課し、9割以下は再テストをさせる
などなど。
英語は詰め込みでOK
「詰め込み教育じゃないか!」と思われるかもしれませんが、詰め込みで問題ありません。語学は大量の語彙力が必要ですので、割り切りが必要です。
詰め込みしない教育は他の科目で錬成すればよいのです。
また、つまらない授業かもしれませんが、問題ありません。もともと大して面白い授業ではないのですから。
もしこの考えに疑問があれば、昨日も紹介した、私が尊敬して止まない廣津留先生の著書をお読みください。内容もさることながら、ベトナムの高校入試の問題が載っています。
どのレベルの高校だかはわかりませんが、普段公立高校の入試問題を見ている身からすると、あまりのレベルの高さに絶句します。ほかの国ではこのようなレベルの英語が求められているのです。
追いつかれないためにもこの程度のことをやるべきでしょう。